フリーランスでサラリーマンの年収と同じくらい稼ぐには何倍稼ぐ必要があるでしょうか?
「フリーランスの方が経費にできる分サラリーマンよりも儲かる」
「フリーランスはサラリーマンの3~5割増しもらってトントンだ」
「フリーランスはサラリーマンの2~3倍稼がないと同等とは言えない」
ネットでフリーランスの年収比較を調べると色んな考え方が存在します。
一体どれが正解なのでしょうか。
実は『全て正解』と言えるのです。
サラリーマンとフリーランスの年収の比較は、考え方ひとつで大きく異なるのです。
実際にいくつかの側面から仮年収比較をしてみて検証しつつ、独自の見解を行いたいと思います。

目次
『年収』という概念はサラリーマン特有のもの
そもそも、なぜ単純に比較することができないのでしょうか。
それは、個人事業には『年収』という概念が存在しないからです。
サラリーマンの『年収』は月の給与と賞与から簡単に算出することができます。
その数字は『手取り金額』ではなく、基本的に税金を含めた『総支給金額(額面)』にて計算されます。
仮に年齢を35際とし、平均年収額より年収額を450万円とします。
計算上は月収30万、賞与夏冬合計3.0ヵ月分といったところでしょうか。
では、サラリーマンとフリーランスの年収450万がどのように異なるのか検証比較してみましょう。
税金を比較してみよう
では、まずそれぞれの『年収』に対して、税金と手取り金額がいくらになるのか比較してみましょう。
| サラリーマン | フリーランス | |
| 年収額 | 4,500,000 | 4,500,000 | 
| 所得税 | -110,000 | -396,000 | 
| 住民税 | -220,000 | -420,000 | 
| 社会保険料 | -650,000 | -753,000 | 
| 個人事業税 | -80,000 | |
| 手取り額 | 3,520,000 | 2,851,000 | 
サラリーマン・フリーランスともに、何も節税対策を行わなかった場合のあくまで一般的な参考額になります。
年収にもよりますが、基本的にフリーランスの方が税金が高くなります。
特に個人事業税は業種により発生しますが、個人事業特有のものになります。
年収450万円で比較すると、手取り額で66.9万円もの差が生じてしまいます。
単純に計算するとフリーランスの方が支払う税金が大きくなってしまいます。
手取り額の比較でいえば、『フリーランスは1.24倍多く稼ぐ必要がある』と考えられます。

個人事業には『経費』の考え方がある
フリーランス、つまり個人事業にだけのメリットとして、『経費』として節税をすることができます。
サラリーマンの場合、会社が認めたものは経費にすることができますが、対象となるものはかなり限定されてしまいます。
対してフリーランスの場合、様々なものを経費として計上することが可能になります。
例として、家賃・光熱費・飲食代・パソコン代・携帯料金・文房具などがあげられます。
経費にできる内容や割合は、事業や環境によって大きく異なりますが、サラリーマンでは経費にするのが難しいものばかりです。
これをうまく活用することで、支払ったお金を経費として申請し、これから支払う税金の額面を減らし、結果的に手取り金額を増やすことができるのです。
サラリーマンにとって経費と言えば、得意先との接待を経費にできれば”タダ”になる印象があります。
当然会社が払ってくれるので、経費にできれば個人としては100%得をします。
フリーランスの場合、経費にしても支払うのは自分自身なので、支出額は変わりません。
経費を積み重ねることで”所得”を減らし、税金額を減らすという考え方になります。
仮に下記の条件で節税額を計算してみましょう。
家賃・光熱費・通信費などは100%経費にはできず、「どのくらい事業で使っているか」を按分して決定します。
| 月支払 | 按分 | 月経費 | |
| 家賃 | 65,000 | 50% | 32,500 | 
| 光熱費 | 5,000 | 50% | 2,500 | 
| 通信費 | 10,000 | 50% | 5,000 | 
| 合計 | 40,000 | 
家賃は面積比、光熱費・通信費は1日あたりの稼働時間からそれぞれ50%で仮想定としました。
また、交際費(接待の外食代)や事務用品費(パソコン代)などを、月5万円程度と仮定した場合
(4万+5万) × 12か月 = 108万円
年間約108万円を経費にすることができます。
さらに、確定申告をする際に『青色申告』というものを行うことで、所得から最大65万円の控除を受けることができます。
それらの経費を考慮した年収比較をしてみましょう。
| サラリーマン | フリーランス | |
| 年収額 | 4,500,000 | 4,500,000 | 
| 所得税 | -110,000 | -141,000 | 
| 住民税 | -220,000 | -247,000 | 
| 社会保険料 | -650,000 | -625,000 | 
| 個人事業税 | -26,000 | |
| 手取り額 | 3,520,000 | 3,461,000 | 
手取り金額だけで比較すると、ほぼ同額くらいまでになりました。
当然、経費にできる内容が多くなれば実質の手取り額も多くなります。
しかし、経費分は実際に使っているわけですから、残るお金はその分少なくなってしまいます。
この数字を比較した場合、ほぼサラリーマンの年収と同等と言えますし、経費の割合が増えれば『経費にできる分サラリーマンよりも儲かる』とも考えられます。
年収比較には『退職金』と『年金』を考える必要がある
次に、サラリーマンにはフリーランスよりも大きく優遇された部分があります。
まず1点目が『退職金』です。
多くの会社は退職金を導入しており、従業員数100人以上の会社の約85%が退職金制度を設けています。
退職金は勤続年数によって受給額が大きく異なりますが、退職金のお金はあくまで毎月の給与から会社が勝手に積み立てているのです。
一般的な企業の退職金は平均1600万円前後だと言われています。
会社に勤めていれば自然と退職金が受け取れるため深くは考えませんが、フリーランスの場合はそうはいきません。
年収入をそのまま所得に換算すれば、同じ年収でも生涯年収で退職金の分の差が出てきます。
2点目が『公的年金』です。
税金比較の欄で社会保険の支払額に大した差はありませんが、フリーランスは国民年金に対しサラリーマンは厚生年金を支払っています。
年金単体の支払額は厚生年金の方が国民年金よりも多くなります。
一見サラリーマンの方が損しているように思えますが、当然受給額を比較しなければなりません。
厚生年金の年間平均受給額は207万、それに対し国民年金は70万になります。
支払い額は倍ほど違わないのに、受給額は実に3倍もの差が生じてしまうのです。
実は、サラリーマンの厚生年金は会社が半分支払ってくれているのです。
毎年多く支払っているのだから、当然受給額も大きくなるのです。
仮に65歳から平均寿命の約85歳まで受給した場合、20年間で以下の金額になります。
サラリーマン 207万 × 20年 = 4140万円
フリーランス 70万 × 20年 = 1400万円
その差は2740万円にまで膨らみます。
退職金と年金を足すと4240万円の差になります。
勤続年数を40年として割り替えすと、1か月あたり106万円もの差が生じるのです。
これが、サラリーマンとフリーランスの年収を簡単に比較できない大きな理由の一つです。
退職金には税金がほとんどかからない制度になっているため、手取りで106万プラスと考えると、サラリーマンの実質手取り額は下記になります。
| サラリーマン | フリーランス | |
| 年収額 | 4,500,000 | 4,500,000 | 
| 手取り額 | 3,520,000 | 3,461,000 | 
| 年金・退職金 | 1,060,000 | 0 | 
| 実質手取り額 | 4,580,000 | 3,461,000 | 
もし寿命よりも長く生きる場合を想定すると、この差はさらに大きくなると考えられます。
この数字を比較した場合、『サラリーマンの3~5割増しでトントン』とみることができます。

安定性や将来性の違いを考慮する
一般的にサラリーマンは働く上で最も安定した立場だと言えます。
会社が倒産してしまうリスクはありますが、雇用保険によって失業手当を受給することもできます。
社会保険は他にも、病気やケガで仕事が継続できなくなった場合に保険料を受給することができます。
会社によっては福利厚生が充実していれば、育児休暇や家族手当の支給などもあります。
また社内で仕事の責任が大きくなれば、自然と役職も上がり給料が増えていきます。
35代で仮に450万の年収だとしても、45歳で600万、55歳で800万と増えていくことで、生涯年収が大きくなる可能性があります。
ではフリーランスの場合はどうでしょうか。
事業の継続は自身が経営者ですから自分次第と言えますが、一般的に個人事業の継続はサラリーマンと比較すれば難しいものだと言えます。
また社会保険には基本的に加入できないため、フリーランスは失業保険もなければ、病気で休んだ分会社が面倒を見てくれることは一切ありません。
年齢を重ねるほど知識と経験は積み重なるため、それを利益にして収入を上げることができるかもしれません。
しかし、労働力としてのパワーは年齢とともに落ちてくるため、フリーランスが毎年同じ仕事を続けていると収入は歳を取るにつれ下がる可能性があるのです。
仮に今後の平均収入を、サラリーマンは一般生涯年収3億円÷40年=750万、フリーランスは現在の450万として比較した場合、1.67倍もの差が生じると考えられます。
更に福利厚生や社会保険、そして様々なリスクを金額に換算すると、年収比較で『2~3倍は稼がないと同等とは言えない』と考えられるのです。
サラリーマンと同等の金額には『年間120万円多く稼げ』ばいい?
結局のところ、どれも考え方として間違いではありません。
ただ、一つ独自に答えを出すとすれば、私はサラリーマン年収と比較し『年間120万円多く稼げば同等』と考えています。
個人事業主であるフリーランスには、年金を『iDeCo』、退職金を『小規模企業共済』を使って積み立てることで、節税しながらサラリーマンに近い保証を受けることができるようになります。
iDeCoの場合、個人事業主であれば年間68,000円までを積立つつ、それを全額所得控除にすることができます。
厚生年金と国民年金の差額分2740万円をiDecoで積み立てる場合、25年間継続・運用益3%で想定した場合、月額6万円でほぼ同等金額になります。

もう一つ、小規模企業共済は個人事業主の退職金制度のようなもので、月最大7万円分を積み立てつつ、全額所得控除にすることができます。
月4万円を25年間積み立てることで、退職金の平均額1500万とほぼ同等金額となります。

つまり、iDeco6万円、小規模企業共済4万円で月10万円、年間120万円を多く稼ぐことで、サラリーマンと同等の年収と言えるのです。
120万円分は全額所得控除となるため、税金額は変わりません。
これは所得が増えた場合でも同じことが言えます。
年収が仮に倍になった場合を想定してみましょう。
年収に合わせて家賃も高くなるのが普通です。当然経費の割合も増えてきます。
収入が倍になるということは活動量も倍になっているので、当然接待などの交際費や事務用品に使う費用も倍になってもおかしくはありません。
そもそも個人事業主の経費はサラリーマンの給与所得控除と同等になるように作られたものなので、税金の差がなくなることを想定して作られています。
つまり、適度に経費を使えば、基本的には収入に関係なくサラリーマンと同等の手取りを得られると考えられます。
つまり、どの年収に対しても『120万円多く稼げばサラリーマンと同等』と言え、比率にすれば年収が大きくなるほど比率が下がると言えるのです。
サラリーマンと比較すれば、当然様々なリスクや社会保険の違いはありますが、その分はフリーランスの自由度と比較すれば当然のリスクとも言えます。
当然、年収が1000万を超えてくる場合、35歳で1000万となれば大手会社の可能性が高くなるでしょう。
退職金も大手は平均2000万近くあり、また年収が増えれば厚生年金額も当然大きくなるため、通常1000万円もらっているサラリーマンと120万円の差額で比較することはできなくなります。
ただ、自分がもらっていた年収と比較しつつ、倍率で考えるのではなく、差額で考えるのも一つの考え方として参考にされてみてはいかがでしょうか。

サラリーマンとフリーランス、両方のメリットを理解することが大切
将来性やリスクを考える場合、金額面でいえば2~3倍と言えますが、会社から独立しフリーランスとして自由に生きることは、金額に代え難い大きなメリットと言えます。
会社にいれば将来60歳近くで年収1000万になるかもしれません。
しかしフリーランスで成功すれば来年には年収1000万を超える可能性もあります。
一番大切なことは、目先の金額だけを比較せずに、未来のリスクと可能性をしっかり考慮した上で比較することが大切です。
同等の金額を稼げたからと浮かれてもいけませんし、2倍も3倍も稼がないといけないと悪く見すぎるのもよくありません。
自分が何を大切にし必要としているかをよく考え、フリーランスとしての目標金額を決めて頑張ることが何よりも大切だと思います。




	        	        		
	        	        		
	        	        		
	        	        		
	        	        		
	        	        		
	        	        		
	        	        		
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